M&A交渉をしている交渉先の会社で事前研修という形で週に3日,1か月ほど働かせてもらいました。
研修をしてみて感じましたが小規模な会社をM&Aする場合、事前研修はメリットしかありません。
最近はサラリーマンの方が小規模な会社をM&Aする事例が徐々に増え始めており、スモールM&Aが流行ってきていると感じています。
小規模とはいえ、大抵の案件はM&A価格は1千万円を超えるものが大半で失敗した場合、多額の負債を抱えるリスクがあります。
そういったリスクを出来る限り下げる為にも事前研修をしておく事をお勧めします。
本記事では、事前研修をする事のメリットについて紹介したいと思います。
目次
事前研修は小規模M&Aにおいて最高のリスクヘッジ
サラリーマンが買える規模の会社というのは従業員の数が少なく、社長がプレイングマネージャーのような立場で全ての業務をカバーする会社が大半だと思います。
少なくとも私がM&Aの活動を通してみつけた会社はそのような会社でした。
そういった会社をM&Aした時の最大のリスクとしては、自身が社長にかわって同様の業務ができるかどうかだと思います。
前にテレビでフリーペーパーを発行している会社をM&Aしたサラリーマンの失敗談がTVにて報道されてましたが、その方は就職してから設計一筋で働いていましたが、購入した会社での業務は営業活動がメインで、営業活動のコツをうまく掴む事が出来ずM&Aしてから数か月で運転資金が枯渇するといった事態となりました。

このように買収した会社の業務内容と自身のスキルに親和性が全くないと失敗する可能性が高いです。
業務内容をしっかり確認して精度の高い脳内シミュレーションが出来ればいいのですが、M&Aをすると決めると前のめりになり、大丈夫なんとかなるといった気持ちが強くなり正確なシミュレーションは難しいものです。
1000万円単位の金額が動き時には融資で多額の借入が必要となる為、ポジティブシンキング、勢いでいかないといけない部分もありますので仕方ないのですが。。。
その点、事前研修にて交渉先の会社で試しで働いて見るとシミュレーションでなく実際に体験が出来る為、冷静に見極める事ができます。
事前研修をする4つのメリット
そのほかにも事前研修をする事で得られる大きなメリットを4つ紹介します。
交渉相手のM&Aに対する考えがわかる
最近は中小企業では高齢化により跡継ぎ不在の為M&Aで第三者を後継者として会社を継いでもらおうと考えている経営者が増えています。
そういった会社の場合、いままでお世話になった顧客や従業員に迷惑をかけたくないという思いが強く、M&A希望者に非常に協力的になってくれます。
そういった会社でしたら、買収後に簿外債務が見つかったりといったリスクもかなり低くできると考えます。
ただ中に売り逃げを考えている経営者いますので事前研修をもちかけた際に、喜んで対応して貰える場合は前者、嫌々断ったり、事前研修をするなら交渉決裂を匂わせるようなら後者の可能性が考えられ交渉先の会社に対してデューデリジェンスをどの範囲まで行うかなどの判断材料とする事ができます。
会社にて事前研修する事で簿外債務の有無が確認できる
良く聞くM&Aの失敗事例としては買収先の会社に簿外債務が見つかった事などがあげられます。
簿外債務とは例えば、
- 経営者が会社名義で借入を行っているのに帳簿に記載されてなかったり
- 会社名義で別の会社もしくは個人の連帯保証人となっていたり
- 帳簿に記載されている棚卸資産と実物の個数が違っていたり全く資産にならないような不良在庫だったり
といったものですが、①や②に関してはヒアリングして確認したり契約書にそういった債務が見つかった際の対処に関して文言を追加して防ぐ事ができます。
また事前研修で会社の雰囲気を感じると①、②の有無が何となく分かります。また③に関しては事前研修中の業務で商品の出荷などを行う際に確認ができます。
顧客との関係性が分かる
顧客との関係性もM&A後に失敗をしない為の要素として非常に重要です。
失敗談で社長が交代した際に取引を切られてしまったという事を良く聞きます。
社長との個人的な繋がりが強いのか、それとも会社としての繋がりが強いのかなどを営業活動に同行したりすることで、こういったリスクもある程度把握する事ができます。
業務内容を把握する事で将来の事業計画をイメージしやすい
M&Aは時間がかかります。
金額により融資が必要な場合、融資審査で2~3か月ほどかかりますので最終合意まで早くても3ヵ月、通常なら6か月から1年くらいかかると予想されます。
その間に色々とやる事もありますが、特に重要なのが買収後の事業計画を何度もイメージする事です。
買収先の事業をそのまま継続するだけでは徐々に事業は衰退していく事でしょう。
そこで自身の技術、経験とのシナジー効果を最大限発揮にして事業を発展するにはどうしたらいいのかを考える事が大事です。
研修をせずに考えると実情とイメージが大きくずれが生じ、買収後の経営が上手く行かない可能性もあります。
事前研修をすることでこのずれは修正できます。
サラリーマンをしながら事前研修は可能なのか?
交渉先が通勤圏内にある会社でしたらサラリーマンをしながら事前研修は十分に可能と考えます。
週に1日、1か月で4回働くだけでも前述した内容を判断するに十分な情報を収集できます。
毎週有給休暇などをとるのが難しい場合、午前や午後の半日だけにしたり、回数をもう少し減らしたりして調整しましょう。
事前研修を申し出るタイミングはいつ頃か
事前研修を交渉先に申し出るタイミングは非常に難しいものです。
タイミング次第では社長に変なイメージを持たれて交渉中断する可能性もあります。
例えば初回面談でまだお互いの事を良く理解できていない段階で事前研修を申し込むと、例え無償だったとしてもいい気はしないと思います。
タイミングとしては数回面談をしてお互いにしっかりと信頼関係を築いた上で申し出るのがいいと思います。
基本合意一歩手前などもいいかもしれません。
交渉を始めてある程度時間が経過したら、交渉先も交渉相手をあなただけに絞っている可能性も高く相手にとっても交渉決裂してまたはじめからとなると多大な労力もかかるため断りにくい環境にもなります。
ミスマッチでお互いに不幸にならない為にも事前研修をしよう!!
現在のスモールM&A市場は売り手よりも買い手の方が圧倒的に多く、いい案件で交渉まで進める機会はかなり少ないです。
その為、下手な事をいって交渉先の社長に変なイメージを持たれた交渉中断されたらどうしようと考えなかなか事前研修を申し込む事ができない事もあると思います。
ただ、自身の会社を引退後も継続していって欲しいと強く考える経営者の思いに応えるためにも、買収後に経営に失敗して多額の借金を負うといったミスマッチを無くす為にも事前研修を最終合意までに提案、経験する事をおすすめします。