個人でM&Aをする場合、大半の案件は最初からアドバイザーが間に入っているので個人でM&Aをやる場合、特に初めての案件ではよほど小さな案件でない限りアドバイザーと契約する事になると思います。
アドバイザーはM&Aや金融の知識が豊富で頼りになる存在ですが、中には自身の利益しか考えていない人もおり、それが原因でディールブレイクとなったり莫大な借金を負う事があるので注意が必要です。
本記事ではM&Aアドバイザーに騙されないようにする為に押さえておくべき3つのポイントを紹介します。
目次
M&Aアドバイザーを信頼しすぎるのは危険!! 一定の注意を払う事
はじめてM&Aをするときにアドバイザーは、知識が豊富だし案件がスムーズにいくように色々と考えてくれて非常に頼りがいのある人に見えます。
しかしだからといって完全に信頼してその人のいう事を全て鵜呑みにするのは非常に危険です。
なぜ危険かというと
- 料金体系が成功報酬制度をとっている。
- 1案件の最低料金が大体200万円以上と高額で、案件の売買を成立させればさせるほど儲かる。
- 個人レベルの案件は独立してすぐや実績のないアドバイザーにあたる可能性が高い
からです。
M&Aアドバイザーは売買契約が成立した時にのみ、報酬が貰えるといった成功報酬制度という料金体系をとっている所がほとんどです。
案件を成立させないと1円も貰えないので必死で案件を成立させようとします。
中には全く条件の良くない案件でも、悪い部分を隠していい部分だけを強調して売買成立させようとする事も。
またM&Aアドバイザーの報酬は最低料金が200万円ほどで、売り手と買い手の両方とアドバイザー契約を結べれれば1案件こなすだけで400万円という高額な報酬が手に入る訳です。
そして個人レベルの少額案件には信用の高い、いわゆる老舗M&A仲介企業は相手にしてくれません。
そういう会社は最低報酬が1000万円以上だからです。
個人を相手してくれるのは大体独立開業してすぐの仲介の人ばかり。中には独立してから1件も実績がなく金欠状態の人も。
そういったアドバイザーだった場合、出来るだけ早く案件を成立させて成功報酬を得たいと考えており、売り手側に何かしら問題が見つかったとしても握りつぶしてさっさと売買成立させようとする訳です。
事業引継ぎ支援センターで紹介されるアドバイザーも要注意
事業引継ぎ支援センターというのは国が後継者のいない中小・零細企業の事業の引継ぎを支援するために作った団体で、この団体から案件を紹介された場合、売り手側(後継者のいない中小・零細企業側)のセンターで選んだアドバイザーが仲介人となります。
国の機関が紹介するM&Aアドバイザーなので大丈夫だろうと無条件で信頼してしまいそうですが注意が必要です。
私も事業引継ぎ支援センターから紹介されたアドバイザーに騙されかけました。
事業引継ぎ支援センターに登録されている人はてっきり、センター側で信頼できるか否か選別されているものと思っていたのですがそうではなかったのです。
あとで知ったのですが、事業引継ぎ支援センターに登録されている業者は自分でセンターへアドバイザー登録をしに行き、空きがあれば登録できてしまうという早い者勝ちのシステムでした。
なので事業引継ぎ支援センターで紹介されたアドバイザーであっても信頼出来るかどうかはしっかりと見極めましょう。
【実例】バトンズで見つけた300万円で売りに出ていた会社の案件を担当していたアドバイザーの場合
実際に事業承継の活動をしていてこれは酷いなと感じたアドバイザーの例を紹介します。
そのアドバイザーとはバトンズというM&A仲介サイトで見つけた案件で知り合いました。
その案件はそこそこの規模の会社でしたが売値が300万円と格安で、自分が知見のある領域の事業だったので興味が湧き連絡をとってみたところ、すぐにアドバイザーから返事が来て会って詳細を聞く流れに。
しかし具体的に案件の内容を聞くと会社の状態がかなり酷く、決算は2年連続で赤字。
更に数億円の負債がある会社でした。
売値が300万円というのは会社としての価値は0円で300万円というのは担当指定るアドバイザーの仲介料金だそうで、会社の財務状況があまりに悪く仲介手数料を捻出する事ができないから売値として乗せているとの事でした。
正直この時点で興味はなくなり断ろうと決めていたのですが、その後のアドバイザーの営業トークが凄かったです。
ポジティブだけど根拠に乏しいような内容の話の数々を弾丸トークで浴びせてきます。
・数億円の負債を抱えている=銀行がそれだけ融資できる価値があると認めた会社である
→大半の負債がバブル時代に抱えたもの。不動産とか別事業に手を出した結果なんじゃ?
・事業が軌道にのれば全然返済できない金額じゃない
→規模的に従業員を倍増させないと難しそう。だけどそんな債務超過の会社に入社してくれる人がいるのか疑問
・現社長が負債を出来る限り圧縮しているから引き継ぐ頃には大分負債が減っている
→すでに家などの私財は全て売却済だそうで、どうやって負債を圧縮するのか根拠がない。
などなど
試しに事業と従業員だけを事業譲渡して会社と負債は現社長のほうで処理出来ないか聞いた所、それは絶対に出来ないと断られました。
事業譲渡なら負債を除いて事業だけの譲渡はできるはずなのですが。。。
その質問をもってこの案件は借金を引き継ぐカモを探している案件だと判断し帰路につきました。
個人が会社を買いたい、社長になりたいという思っても相手にしてくれる案件は少ないので前のめりになりすぎてこういった案件を契約してしまう可能性があります。
M&Aで多額の負債を負わされたり、買った後に事業で失敗しない為に最低でも3つのポイントは押さえて交渉に望みましょう。
M&Aアドバイザーを見極める為の3つのポイント
最後にM&Aアドバイザーが信頼できるかどうかを判断する能力を身に付ける為に必要な3つのポイントを紹介します。
- M&Aアドバイザーとしての経験は豊富か?
- 財務諸表を読めるようにし会社の財務状況を判断できる知識を身に付ける
- 同業種の平均利益率などを把握しておく
①M&Aアドバイザーとしての経験は豊富か?
最近は小規模M&Aの市場が成長している事もあり、色んな企業がM&A仲介サービスをするようになりました。
特に資格が必要な業務ではないので、M&Aコンサルティング会社に数年勤めて独立した人やM&Aに知見のある税理士や中小企業診断士などが行っていたりします。
中には全く経験がない人もいるのでアドバイザーの経歴はしっかり確認しましょう。
またアドバイザーの会社のHPを調べて社歴が長いかなどもチェックが必要です。
HPが無いような所はかなり怪しい可能性が高いので注意しましょう。
②財務諸表を読めるようにし会社の財務状況を判断できる知識を身に付ける
アドバイザーの言葉に惑わされないようにする為には、やはり自身で知識を身に付ける事です。ある程度財務諸表を読めるようになればアドバイザーの言葉が正しいか判断できます。
また財務諸表を読む能力は経営者となってからも必ず必要なのでしっかりと勉強しましょう。
③同業種の平均利益率などを把握しておく
買おうとしている同業種の平均利益率は中小企業庁のHPなどで見る事ができ、簡単に調べられます。
同業種の平均の経営指標などを把握しておけば、例え会社に負債があったとしても問題ないレベルなのかどうか判断ができるでしょう。
因みに実例で紹介した案件は、従業員数と利益率から換算して上手くいっても金利くらいしか支払う事ができないような案件でした。
以上のように3つのポイントを押さえておくだけでも騙されたり失敗する可能性はかなり下げられます。